日本はかなりの食品を輸入に頼っています。
そのため、この法律はかなり重要になってきます。
食品の輸入の際は厚生労働省に対して食品届を提出し届出済証という証書を入手して通関の際に税関に提出することになります。
通関業者ではこの食品届の手続きも代行することができます。業者さんによって得手不得手はあるかと思いますが、実務上この手続きの知識もかなり必要になってきますので、押さえておきましょう。
対象貨物について
「食品」とついていますので、もちろん食べ物が対象になるのはわかると思いますが、口に入れるもの全般が対象になります。
食べ物でないのに、口に入れるもの。なぞなぞみたいですが・・。
つまり、食器類も対象になります。直接口をつけなくても食べ物がじかに触れるものが対象になります。包丁、冷蔵庫の氷入れ等。
そしてもう一つはおもちゃです。
え、おもちゃ?って思うかもしれませんが、赤ちゃんはおもちゃを口に入れますね。うちの子もよくおもちゃをかじっていました。幼児が使用するおもちゃは対象になりますが幼児の規定が今はあいまいになっているようです。前は対象年齢6歳以下、未就学児を幼児と規定していたかと思います。
食品届の流れ
製法の注意事項(たべもの)
・製造所の名称と住所を明記する
・品名を申告用インボイスなど他の書類と同じにする
・製法の詳細を明記する
→ただ「殺菌」と書くだけでなく、どうやって、何℃で何分殺菌しているのかわかるように。加熱は中心温度何℃で何分など過熱の程度がわかるように。冷凍は急速冷凍、温度などがわかるように。などなど、特に温度変化は詳しく書いていたほうがいいです。
原材料表の注意事項(たべもの)
・製造所の名称と住所を明記する
・品名を申告用インボイスなど他の書類と同じにする
・原材料は合計で100%になるように比率を記載する
・材料名は一般名や略称でなく物質名を明確にする
(味の素→L-グルタミン酸ナトリウム、次亜ソー→次亜塩素酸ナトリウムなど)
器具の全体図、部品リストについて
・全体図はバラした部品が、どことどこがつながるか分かるようなものがいいと思います
・部品リストは全体図と紐づけできるように部品番号などを入れてください。その他材質、色、写真や絵を入れて表にします。
・部品リストは食品が触れる部分だけで大丈夫です。
・材質と色が同じ部品は分析するときどちらかだけでいいので、部品番号○○と××は同色同材質という文言も入れるといいと思います。
・製造所の名称と住所を明記する
事前相談について
はじめての食品を輸入する場合、貨物を輸入する前に事前相談を行いましょう。
依頼する予定の通関業者が代わりに相談も行ってくれると思います。
自分で行く場合は、最寄りの検疫所の食品監視課へ。事前にアポイントを忘れずに。
慣れていないと検疫所の言っていることがチンプンカンプンで何をしたらいいのかわからなくなる、ということもありますので、業者に付き添いをお願いするのもおすすめです。
ポイントは
- 製法、原材料法表の記載内容の確認
- 衛生証明書などの必要書類があるかどうか
- 必要な分析項目(自主検査、命令検査)
- 分析に必要な数量
- 分析にかかる費用(通関業者、分析機関に確認)
輸入の前に行っておくと到着してからがスムーズに行えますので、必ずしたほうがいいと思います。到着してから確認していると、書類の不備で時間がかかったり、想定しているよりも分析費用がかかったり、最悪の場合、日本で禁止されている添加物が使用されていたりすると輸入できないなんてことも起こります。
検査の種類
食品等を輸入するためには所定の検査分析等を必要とするものがあります。
自主検査
品目によってある程度検査項目が決められた規格検査と添加物や原材料、製造国などによって指導されるものがあります。
検査の有効期限は
- 器具であれば基本的に製造所や材質に変更がなければ期限は設けられていません
- 食料品の場合基本的に1年間
規格検査一覧
規格検査とは分析項目がセットになったもので、例えば、粉末清涼飲料水の規格検査といえば混濁、沈殿・異物、ヒ素、鉛、(スズ)、大腸菌群、細菌数の分析になります。
以下のタイトルからさらに細分化されるものもあります。
具体的な検査項目等は、検査機関や通関業者へ問い合わせましょう。
食品関係
- 清涼飲料水
- 粉末清涼飲料
- 氷雪
- 氷菓
- 食肉及び鯨肉(生食用食肉及び生食用冷凍鯨肉を除く。)
- 生食用食肉(牛の食肉(内臓を除く。)であって,生食用として販売するものに限る。)
- 食鳥卵
- 血液、血球及び血漿
- 食肉製品
- 鯨肉製品
- 魚肉ねり製品
- いくら、すじこ及びたらこ(スケトウダラの卵巣を塩蔵したものをいう。)
- ゆでだこ
- ゆでがに
- 生食用鮮魚介類
- 生食用かき
- 寒天
- 穀類,豆類及び野菜
- 生あん
- 豆腐
- 即席めん類
- 冷凍食品
- 容器包装詰加圧加熱殺菌食品
器具・容器包装・おもちゃ
- ガラス・陶磁器・ホウロウ引き
- 合成樹脂
- ゴム
- 金属缶
- おもちゃ
その他指導
食品には、様々な添加物や着色料、原材料が使われています。
こういう原材料を使っている製品にはこういう物質が混入する恐れがあるみたいなパターンが数多くありそれらの分析を指導されます。
検出されてはダメなものと、基準値以内だったらOKなものとあります。
例
- 唐辛子を使用している食品:スーダンⅠ~Ⅳという発がん性のある赤い着色料
- ワイン:二酸化硫黄(酸化防止剤)、ソルビン酸(保存料)
- 中国食品:サイクラミン酸(チクロ)という発がん性のある甘味料
- 農産物、加工品:残留農薬
などなど。
モニタリング検査
厚生労働省が年間の計画に基づいて抜き打ちで行う検査になります。
検査結果が出る前に届出済証が発行されるので輸入通関や配送は可能ですが、検査結果に問題があれば回収の必要があるため、流通するのは避けたほうがいいです。急ぎの場合でも自社倉庫まで持って行くくらいにとどめておきましょう。検査結果は項目によって違いはありますが、一週間から十日ほどかかります。
検疫所が主導で行いますので、分析にかかる費用は発生しません。(業者さんの立会料はかかると思います)
命令検査
海外の農産物で農薬が検出されて問題になったり、ニュースなどで目にしたこともあるかもしれませんが、過去にモニタリング検査や自主検査などで、検査結果がよくなかったものなど、過去に違反が多いなど問題が生じているものが対象の検査です。
輸出国毎に品目を定め、輸入の度に決められた分析を行わなければなりません。
リストは適宜更新されているため輸入時にまず確認する必要があります。
まとめ
前述したとおり、ある程度の予備知識がないと事前相談に行っても、何を言われているのかわからない可能性がありますので、基本的なところは押さえておきましょう。
検査が必要なものなどは日々変わっていきます。
どこかで違反が出ると全国的に周知され、検査頻度が上がったり項目が追加されたりしています。実績があっても、期間を開けて輸入する場合などは、最新の情報を入手しましょう。
幅広い貨物を取り扱う通関業者にとって、この食品の知識は結構重要になってきます。なかなか経験しないとわからないことも多いですが、基本の流れ、検査の種類などは押さえておくといいと思います。
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