輸入関税が安くなる!?便益関税の種類や適用時の注意点を解説

通関

世界貿易機関WTO(World Trade Organization)では貿易の円滑化を目的として様々な規定をしています。164の国と地域が加盟しており、このルールに基づいて貿易がされています。先述のHSコードもその一つです。基本的に関税はWTO協定税率を適用しますが、国によって、これより安い税率(便益関税)を利用できます。

利用するには以下の条件を満たす必要があります。

  • 特恵税率が設定されていること。
     通常の税率より安い税率が設定されていないと意味がないですね。
  • 現産品であると認められること(後述する原産地規則を満たすこと)
  • 積送基準を満たしていること。
     原産国から日本へ直接送られていることがわかる書類が必要
  • 有効な原産地証明書があること

一般特恵

発展途上国、後開発国(特恵受益国)については貿易にかかる関税の負担を軽減させ貿易の促進をするために、通常よりも安い税率で輸入ができます。この税率の適用のためには原産地証明書(Foam A)を税関に提出する必要があります。現地の商工会議所、税関などで発行できるようです、foam Aというフォームでなければいけませんので、現地に依頼する場合は注意しましょう。

ほんの数年前まで中国もこれに属しておりましたが急激な発展とともに品目ごとに除外されていき、ついに卒業しました。昔はよく緑の原産地証明書(中国の原産地証明書)を見ましたね、懐かしい。

EPA(経済連携協定)、TPP11(環太平洋パートナーシップ)

EPA、TPP11はニュースでもよく取り上げられているので聞いたことはあると思います。

日本と個別の国(EUなども)との経済連携協定と日本が属するグループでの経済連携協定が挙げられます。

この経済連携協定は関税だけを規定しているものではありませんが、この税率を適用するためにはそれぞれのフォームの原産地証明書が必要になります。

中には自己証明(輸出者や輸入者が証明する)の原産地証明が有効なものもあります。

これからもどんどん増えていくと思います、現在進行している主なものはRCEP、TPP12です。

それぞれで決まりが微妙に違うので、関税がかからないつもりで輸入したのに、関税が発生してしまうなんてことが起こるかもしれません。輸入の前にこの協定税率を適用するためにはどういった書類が必要で、どういう加工であれば原産品と認められるか(後述の原産地規則)などを確認したほうが無難です。

税関のHPによくまとめられていますので、参考にされてください。

我が国が締結した各経済連携協定(EPA)等の概要、条文等 : 税関 Japan Customs

原産地規則について

上記の便益関税を受けるうえで、特に注意すべきことは、原産地規則です。

原産地規則とは何でしょう?

例えば、Aという国で製造された製品を作るのに、Bという国から仕入れた原材料(非原産材料といいます)を使用していたとします。

A国の原産地証明が発行されている場合、この原産地証明書は有効でしょうか?

答えは、「何とも言えない」です。

原産地規則では、A国でどの程度加工されたら有効かどうかということを決めています。

たとえがあまり良くないかもしれませんが、綿製の衣類をA国から輸入するとします。

この衣類のA国以外からの原料(非原産材料)が綿花なのか、綿糸なのか、綿の生地なのか、カットされた生地なのか、ほぼ完成品なのか・・・。

原産地規則ではこのどの段階からOKかというのを決めています。なので、先述のただ“原材料”とだけの記載だと、「何とも言えない」となるのです。

原産地証明書が発行されている時点で、本来これらはクリアされているはずではありますが、税関から確認を求められますので、事前にどういう原料をどこの国から仕入れているのか確認をされたほうがいいです。

また、原産地証明書には以下のような現産品を満たす基準を記号で表してあります。

完全生産品

これは、いわゆる1次製品が該当します。農水産物など、加工されていないようなもの加工の程度が低いものが当たります。

非原産材料がありませんので、現産品と認められます。

原産材料のみから生産される物品(EPA)

原産国で採れた原料のみを使用して作成された製品が該当します。

こちらも非原産材料がありませんので、現産品と認められます。

実質的変更基準を満たす産品

ここからが原産地規則のややこしいところです。

製造者が輸入した原料から、“実質的な変更”を加えるような加工をして製品にしている場合、現産品と認められます。

具体的には、品目ごとにどういう条件を満たすべきかを規定した品目別規則とその品目別規則にないものは一般ルールが適用されます。

通関時点で、具体的な内容の確認が税関より求められることがあります。

関税分類変更基準

非原産材料のHSコードと製品のHSコードが一定以上違う場合に原産品と認める基準です。例:布54類から衣類62類を作成など。この場合類の変更が起きている

原産地規則(品目別規則)でHSコード何桁の変更が必要か、何類、何項からの変更でなければいけないかなどを確認する必要があります。

付加価値基準

非原産材料をもとに、製品とするまでにかかったコストを加算していき製品価格が算出されると思いますが、その算出された価格のうち非原産材料の価格を引いた価格(原産国での付加価値相当)が製品に占める割合が一定以上であれば原産品と認める基準です。

非原産材料の価格割合を算出する根拠が必要になります。

加工工程基準

非原産材料に、ある特定の加工等がされた場合原産品と認める基準です。

化学反応などが規定されている

その他例外的な取り扱い

僅少の非原産材料

HSの変更基準を満たさない非原産材料があったとして、それが製品に対してごくわずかであればもう認めてしまいましょうという規則です。重量や価格に対しての非原産材料の割合が規定されています。条件に当てはまることを証明する必要があります。

累積、自国関与品

発行国間内の原料を使用している場合、累積と呼ばれます。二国間EPAであれば日本から輸出した原料のことを意味します。累積の規定が適用される場合、その原料は原産材料とみなされます。

ただ輸出されただけでは累積とならないケースもありますので、注意が必要です。

まとめ

厳密にいうと各国と締結しているEPA、TPP、特恵、それぞれによって微妙に定義が違っていますので、ここでは概念的なところを押さえてもらえればと思います。

ここでは、原産地規則というものがあって、原産品と認めるかどうかについて決まりがある。ということが理解できていればOKです。

すべてを網羅するのは不可能に近いですので、概念だけでも理解しておけば、後は都度調べれば事足ります。

取引のある国のものをよく読んで、理解するといいでしょう。

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